がんを退治する免疫の働きと放射線(4)

免疫機能への放射線の影響を調べる

放射線長期照射後がん細胞移植実験で見られた放射線による免疫機能の変化をより詳しく調べるため、ケモカインという信号物質に着目して実験を行いました。

がん細胞からはケモカインと呼ばれる信号物質が分泌されています。一方で、がんを排除する免疫機能の主役であるリンパ球細胞の表面にはその信号物質を受け取るケモカイン受容体と呼ばれる部分があります。そのケモカインを受け取ったリンパ球は、がん細胞のところに誘導されてがん細胞を攻撃し排除します。

図5.3.2 リンパ球のケモカイン受容体を作り出す遺伝子の発現量を調べてみたところ、がん細胞移植実験で有意な差が見られた1日あたり20ミリグレイの放射線を400日間照射したマウス(総線量8000ミリグレイ)では、非照射マウスに比べて遺伝子の発現量が減少し、ケモカイン受容体の量が減少していることが分かりました。

この結果から、低線量率でも総線量が高線量の放射線を照射されたマウスでは、ケモカイン受容体の数が減少するため、リンパ球ががん細胞に誘導されにくくなり、がん細胞が排除されにくくなった可能性が高いことがわかりました。

今回の1日当たり20ミリグレイの線量率は、放射線の量の定義としては低線量率の範囲に入りますが、総線量は8000ミリグレイで高線量の範囲になります。今後は、1日当たり1ミリグレイで総線量400ミリグレイの調査をさらに進めるとともに、1日当たり0.05ミリグレイで総線量20ミリグレイの条件でも同様の実験を行い、より低線量率に関する調査を進めていく予定です。

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