放射線による被ばく線量評価に使用するファントムとは、生物またはその一部の模型を指します。
人体や様々な生物の被ばく線量を評価する場合、臓器や組織の被ばく線量から部位別あるいは全身の被ばく線量を求めますが、実際に臓器や組織に線量計を入れて被ばく線量を測定することはできません。そのため、体外で測定した放射線量から臓器や組織の被ばく線量を推定する必要があります。
そこで、臓器や組織、あるいは全身の形状、元素組成、密度を模した模型を作り、その中に線量計を入れて、一定の放射線量を照射することにより、体外の放射線量と体内の被ばく線量との関係を求めます。この模型のことを物理ファントムと言います。
この物理ファントムに加え、近年では、コンピューター上で生物の形状等を再現した数値ファントムが使われています。数値ファントムには、評価したい臓器や組織等の形状を数式で表現したファントムと、小さな直方体の集合体として表現したボクセルファントムがあります。これらのファントムと放射線との反応をコンピューター上でシミュレーションして、部位別あるいは全身の被ばく線量を求めます。数式で表したファントムでは、生体を球や直方体等の簡単な形で再現しますが、ボクセルファントムでは、MRIやCT画像のデータを元に実際の臓器や組織に近い形のファントムを作ることが可能です。
排出放射性物質影響調査では、再処理工場周辺に生育する動植物を対象として、これらのファントムを作成するとともに、それぞれが自然の状態で受けている被ばく線量を評価しています。
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