再処理工場から排出される放射性炭素(14C)は、主に二酸化炭素(14CO2)の形で排出されます。その一部は光合成によって牧草に吸収され、それを餌とする牛から畜産物として人間へ移行する経路が想定されています。そこで牛に取り込まれた放射性炭素が牛肉へどのように移行するのか、安定同位体である炭素13(13C)をトレーサーとして使い調査を行いました。
実験では、環境研の閉鎖型生態系実験施設で一定量の安定同位体炭素(13C)を光合成によって取り込ませた牧草(以下、13C牧草)を使用し、以下のような条件で肉牛の筋肉中13C濃度の変化を調べました。
なお、なるべく現実的なデータを収集するため、六ヶ所村内にある畜産場の一部を間借りし、実際に行われている方法で飼育を行いました。また、牛肉試料は畜産場で採取した後に持ち帰り、質量分析装置によって測定し13C濃度を求めました。
その結果、図のように投与開始後4週間の間は次第に13C濃度が高くなりますが、投与終了後は次第に低くなっている様子がわかります。これは、牛の筋肉の代謝によるものと考えています。このデータの解析から、56日で残留量が半分になっていくことが明らかになりました。このようなデータを得たことにより、さまざまなケースでの牛肉への残留量を評価できるようになり、より現実的な線量評価モデルの構築に役立つデータを得ることができました。
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