排出放射性物質影響調査

用語解説

グレイ(放射線の単位)

放射線が「もの」に当たった時にどのくらいのエネルギーを与えたのかを表す単位であるグレイと、放射線が「人間」に当たったときにどのくらいの影響があるのかを評価するための単位であるシーベルトについて説明します。

1.グレイ(Gy)について

放射線が「もの」に当たると、その持っているエネルギーを「もの」に与えます。”グレイ(Gy)”は、「もの」が単位質量あたりに放射線から受けるエネルギー量を示す単位であり、吸収線量と呼ばれます。 放射線生物学の祖と言われるイギリスの物理学者であるルイス・ハロルド・グレイの名前に因んで、単位としてその名前が使われています。

グレイはジュール/キログラム(J/kg)とも表され、1グレイは物質1kgあたりに1ジュール(エネルギー量を表す単位)のエネルギーを放射線から受けたということを意味しています。エネルギーを表す単位としてよく使われているものにカロリー(cal)がありますが、1ジュールは約0.24カロリーであり、標準大気圧(1気圧)で20℃の水1グラムを約0.24℃上昇させるエネルギーに相当します。

画像:グレイ・「もの」が単位質量あたりに放射線から受けるエネルギー量を示す単位

太陽の光やストーブの光(主に赤外線)からでも「もの」や人体はエネルギーを吸収します。暖かく感じるのはエネルギーを吸収するからです。しかし、光と放射線では当たった時に起こる反応が違います。放射線は電離という現象を起こすことから「電離放射線」とも呼ばれますが、光ではそのような現象はほとんど起こりません。放射線による電離は原子や分子の構造中にある電子をはじき飛ばしてイオン化させてしまうため、人に当たった場合は人体を構成する有機物の分子構造を変化させたり壊してしまいます。放射線が電離という現象を起こすことが、結果的に放射線の生物影響につながります。

2.シーベルト(Sv)について

シーベルトは放射線が「人間」に当たったときにどのような健康影響があるのかを評価するための単位です。放射線の人間への影響を考える場合、受けた放射線の種類、放射線を受けた部位などを考慮する必要があり、グレイという値だけでは健康影響を評価することが困難です。そこで健康影響の評価を簡単に行えるよう、吸収線量(グレイの値)から計算式を使ってシーベルトの値を求めます。放射線防護の分野で大きな功績を残したスウェーデン人の科学者であるロルフ・マキシミリアン・シーベルトの名前に因んで、単位としてその名前が使われています。

シーベルトの値は、まず人間の各部位(臓器等の組織)の吸収線量(グレイの値)を求め、受けた放射線の種類(放射線加重係数)や体の部位ごと(組織加重係数)に係数をかけて求めます。アルファ線を受けた場合やガンマ線を受けた場合、また、全身で放射線を受けた場合や一部の臓器だけが放射線を受けた場合でも、この計算式を使ってシーベルトの値を求めれば、健康影響の評価や比較が可能となります。

画像:シーベルト・放射線が「人間」に与える健康影響を評価するための値

ガンマ線が全身に均等にあたった場合には、シーベルトの値はグレイの値に等しくなります。例えば1グレイのガンマ線を全身に受けた場合、1シーベルトとなります。

画像:グレイとシーベルトの関係

放射線防護委員会の資料では、1シーベルトの被ばくで、ガンで死ぬリスクが1000人に55人の割合で増加する(約5%リスクが増加する)という報告があります。しかし、同じシーベルトの値でも高線量率放射線による短時間被ばくと低線量率放射線による長期間被ばくでは健康影響が異なること、特に100ミリシーベルト以下の低線量被ばくでは健康影響は認められないという報告もあり、低線量率・低線量放射線に関する生物影響研究が現在でも進められています。

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