本成果報告会は、排出放射性物質影響調査を受託している公益財団法人環境科学技術研究所、公益財団法人日本海洋科学振興財団の共催で行われました。
環境科学技術研究所の小野理事長より開会の挨拶がされた後、同所の企画・広報課課長の石川敏夫から、成果報告に先立ち、放射線の単位や影響に関する基礎的な説明がなされました。
成果報告は、前半に環境中での放射性物質の動きに関する研究成果について日本海洋科学振興財団、環境科学技術研究所環境影響部から発表され、後半に放射線生物影響研究について環境科学技術研究所生物影響研究部から研究成果が報告されました。
前半の海洋科学振興財団からの報告では、海洋観測で得られた六ヶ所村沖海況の特徴に関する報告がされました。
北村分析部長からは、再処理工場が竣工・稼働して放射性物質を含む液体廃棄物の海洋排出が始まった後、その放射性物質がどのように海洋を移動するのか予測するためには、六ヶ所村沖合の海況の特徴を正確に把握するための海洋観測が重要であるとの説明がされました。また海洋観測の一例として、平成26年2月に発生した例年にない海水温の大きな低下が見られた事例の紹介があり、続いて分析部の小藤研究員からその詳細について説明がありました。六ヶ所村沖合では日本海側を北上するつがる暖流と太平洋側を南下する親潮(寒流)が影響して複雑な流れを形成し、例年、冬から春にかけて水温低下は見られているが、平成26年はこれまでの平均より大幅に低く、水温低下だけではなく塩分の低下も見られたことから、親潮からの水の影響が大きかったことが考えられることが報告されました。
続いて環境科学技術研究所からの報告では、トリチウムの海産物への移行に関する成果の報告がされました。
久松環境影響研究部長からはトリチウムに関する基礎的な説明がされた後、環境中に放出されたトリチウムの濃度が低下しても、生物体内での濃度がすぐには下がらず生物濃縮が起こっているように見える事例について紹介があり、このような環境中トリチウム濃度変化がある場合でも生物体内の濃度を正確に予測する計算モデルが必要である、との説明がありました。柴田研究員からの報告では、実際に海産生物であるエゾアワビを対象として実験を行い、計算モデルを作成した事例が紹介されました。この計算モデルはエゾアワビの餌となるアナアオサのトリチウムの取り込みまでを含んだものであり、生物濃縮が起こっているように見える状態も再現できる環境中の濃度変化に対応した計算モデルができたことについて報告がありました。
後半の放射線生物影響研究の研究報告では、放射線の遺伝的影響について小村生物影響研究部長から説明がありました。これまでに行われた放射線の遺伝的影響に関する研究や考え方についての概要が説明され、環境科学技術研究所で行った継世代影響研究の結果について報告がされました。低線量率放射線長期連続照射した雄マウスと照射していない雌マウスを交配させ、その仔や孫の寿命や死因等を調査した結果、低線量率低線量、中線量放射線による照射では影響が見られなかったが、低線量率高線量のオスの仔マウスの集団で寿命短縮が見られた事例について紹介がありました。
最後に日本海洋科学振興財団の折田常務理事から閉会の挨拶がなされ、盛況のうちに閉会となりました。
開催情報入手方法
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(公財)環境科学技術研究所 総務部 企画・広報課
環境科学技術研究所は、六ヶ所村で放射線や放射性物質の環境中における分布や動き、及び低線量率放射線が生物に及ぼす影響に関する調査研究を行っている研究所です。
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