排出放射性物質影響調査

過去の主な成果

青森県内の年間ガンマ線量の分布について

再処理工場の運転にともない放射性物質が環境中に排出されるため、環境への影響について正確に評価することが求められています。そのためにはあらかじめ、環境中に存在する放射性物質の分布を正確に把握しておくことが必要不可欠です。

大地を構成する岩や土には天然の放射性物質が含まれており、放射線を出しています。しかし、その岩や土の種類によって含まれている放射性物質の濃度が異なるため、地域によって放射線の量が異なります。また、雨や雪といった気象条件によっても放射線量は変化します。

そこで、青森県内の184地点を対象に、大地に含まれる天然の放射性物質などから発生したガンマ線の測定を行い、その年間ガンマ線量の分布について調査を行いました。

年間ガンマ線量分布図作成の方法

この分布図を作成する目的は、青森県民が大地からのガンマ線を1年間に平均でどのくらい被ばくするのか、を評価することです。従って、どこの地点で測定を行うのか、対象とするガンマ線を測定するための工夫、が分布図を作成する上で重要な点になります。

年間ガンマ線量分布図

測定地点の選定は、調査開始時の青森県内1市町村1地点を原則として設定し、人口に応じて測定地点数を調整するとともに、線量率の比較的高い市町村、再処理工場が立地する六ヶ所村及び周辺市町村については測定地点を増やして測定を行いました。

大地からのガンマ線量を正確に測定するため、宇宙からの放射線の影響対策を施すとともに、地面から出るガンマ線以外の放射線の影響対策のため1.5mの高さで測定する等の工夫をしています。

年間ガンマ線量分布図
画像:ガラス線量計と設置箱

また、測定器には放射線が当たるとそのエネルギーを吸収蓄積する物質を含むガラス線量計を使用しました。電源や複雑な設備・装置を必要とせず、正確に測定することができるという利点があります。測定では各地点の設置箱の中にガラス線量計を設置し、約3ヶ月間ごとに交換して季節ごとの積算線量を測定し、年間平均線量や季節による変動を評価しました。

季節や天候の影響

画像:ガンマ線量率の季節による変化

大地からのガンマ線は天候や季節によって変動します。その原因は、雪と雨です。

約3ヶ月ごとの年間被ばく線量の測定結果を示します。鰺ヶ沢町においてガラス線量計で測定したもので、約3ヶ月間の積算線量を1年当たりに換算したものです。

12月中旬から3月上旬に測定した結果は、他の期間で測定したものと比較して、約60%程度まで減少しています。これは、積雪によって大地からのガンマ線が遮られた結果低くなったものです。降雪量は年や地域によってばらつきがありますが、青森県内では多くの地点でこのような雪による季節変動が認められています。

また、六ヶ所村で測定した雨が降ったときのガンマ線量率の一時的な上昇について、1年あたりの被ばく線量に換算して示した結果です。

画像:ガンマ線量率の季節による変化

雨が降ったとき(水色の線)に対応して、ガンマ線量率が上昇していることがわかります。

これは、雨により大気中の放射性物質が降下して、地表面の放射性物質濃度が一時的に増加するために起こる現象です。この測定結果から、雪がない4月から11月の間で、大地からの年間ガンマ線量に占める雨によるガンマ線量上昇割合は3~5%程度であることがわかりました。

青森県年間ガンマ線量分布図

青森県内184地点での測定結果をもとに、コンター法を使って作成した分布図を示します。

画像:青森県年間ガンマ線量分布図(赤丸は測定地点)

青森県全体でみると、年間ガンマ線量は日本海側で高く、太平洋側で低い傾向がみられます。青森県はもともと、津軽半島北側や西側の濃緑色で示した年間線量の高い地域のような岩盤地帯でしたが、八甲田や十和田湖、岩木山や恐山などの火山の噴火による火山灰が堆積し、現在のような土壌分布になったと考えられています。

火山灰中の放射性物質濃度は低く、その中でも十和田湖からの火山灰は放射性物質濃度がより低かったとされており、十和田湖から東側の地域に堆積したと言われています。青森県年間ガンマ線量分布図をみても、十和田湖東側地域は青森県内で一番低い地域となっており、そのことを裏付ける結果となっています。

この測定結果から青森県民が1年間大地から受けるガンマ線の平均被ばく線量は0.17ミリシーベルトであることがわかりました。日本平均では0.37ミリシーベルトであるとされており、それよりも低い値となります。

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