排出放射性物質影響調査

用語解説

トリチウム

水素(H)という元素は、原子番号1番の元素です。人間をはじめとした生物の体を構成する基本的な物質であり、また水(H2O)を構成する元素としても知られています。下表に示す同位体があり、1H,2H(重水素)は安定同位体、3Hはトリチウムと呼ばれ放射性同位体です。トリチウム(Tritium)はTとも表され、環境中の大半を占める1Hと比べ3倍の質量をもっています。

画像:水素・重水素・トリチウムの元素構成

トリチウムは、宇宙線と大気中に含まれる窒素や酸素との核反応により常に作られており、天然放射性物質としても存在しています。また環境中に存在するトリチウムには、過去に行われた大気中核実験などにより放出された人工のものもあります。

トリチウムはエネルギーの弱いベータ線を出して安定な元素であるヘリウム3へと変化します。

画像:トリチウムからヘリウム3への変化
グラフ:1ベクレルの放射性物質を飲食した場合に内部被ばくする放射線の量

トリチウムが変化する時に出る放射線はエネルギーの弱いベータ線であるために透過力が小さく、人への影響を考える場合、体外から放射線を被ばくする外部被ばくよりも、体内にトリチウムが取り込まれて被ばくをする内部被ばくを考慮する必要があります。図に、体内に放射性物質が取り込まれた場合、1ベクレルあたり何ミリシーベルト(ただし100万分の1)になるのかを示します。トリチウムは放射性炭素(炭素14)の約10分の1、ヨウ素131と比べて約500分の1と、かなり小さな被ばく線量になることが分かります。これは他の放射性物質と比べてトリチウムから出る放射線のエネルギーが弱いことが原因です。

トリチウムは、原子力発電所では燃料棒内で起こる核分裂反応や制御棒や冷却水に含まれるホウ素と中性子の反応等により生成します。また再処理工場では燃料棒を切断した際に、核分裂反応でできたトリチウムが処理設備内にでてきます。トリチウムは主に水(H2O)の水素(H)の1つと置き換わってHTOの形で存在しますが、トリチウムからなる水(HTO)だけを分離することは難しいため、再処理工場から気体廃棄物や液体廃棄物として環境中に排出されます。

グラフ:1ベクレルの放射性物質を飲食した場合に内部被ばくする放射線の量

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