がんを退治する免疫の働きと放射線

がんは日本人の死因のトップであり多くの人が発症する病気です。また放射線によるがんの発症も心配されています。一方、がんを防ぐ様々な機能が私たちの体には備わっており、その一つが免疫です。ここでは、がんと免疫と放射線の関係について実験した調査についてご紹介します。

がんと免疫と放射線

図5.1.1 がんは正常な細胞が何らかの原因で無秩序に増殖、転移し、臓器などの組織の働きに異常を引き起こす病気であり、その原因にはたばこや化学物質、放射線などがあります。

がんを発症するまでには、図のように様々な段階を経ます。それらの各段階で私たちの体は様々な防御機能を備えており、がんの発症を防いでいます。その防御機能の一つが免疫です。

免疫は、生物体内に侵入した病原菌を駆除する働きとして知られています。その免疫を担っているのは白血球という細胞で、白血球には様々な種類があり、その一つがリンパ球です。このリンパ球は、がん細胞を排除する機能も持っています。

しかし、リンパ球は放射線に弱い細胞であり、高線量率放射線を被ばくした時にはリンパ球が減少して免疫の働きが弱くなることもあります。一方、低線量率放射線を被ばくした時の免疫機能の変化については、これまでのところ十分と言えるデータは得られていません。

環境科学技術研究所で行われた寿命試験において、1日あたり1ミリグレイの放射線を400日間(総線量400ミリグレイ)照射したメスマウス及び1日あたり20ミリグレイの放射線を400日間(総線量8000ミリグレイ)照射したオス・メスマウスでがんによって早期に死亡する寿命短縮が観察されました。

この寿命短縮の原因の一つとして、「放射線によって免疫機能に変化が起きてがん細胞を排除する機能が弱まった」ことが考えられました。そこでこの考え方を検証するために、マウスに放射線を長期連続照射した直後にがん細胞を移植する実験を行いました。