排出放射性物質影響調査

成果報告会年度別一覧

平成27年度 成果報告会 六ヶ所村開催報告

環境科学技術研究所・日本海洋科学振興財団 成果報告会(無料)

日時・会場

  • 日時:平成27年10月2日(金) 13:30~15:40
  • 場所:六ヶ所村文化交流プラザ スワニー 第1・2大会議室
  • 参加者:69名

実施内容

本成果報告会は、排出放射性物質影響調査を受託している公益財団法人環境科学技術研究所(環境研)、公益財団法人日本海洋科学振興財団(海洋財団)の共催で行われました。

環境研の小野理事長より開会の挨拶がされた後、同所の企画・広報課課長の石川敏夫から、成果報告に先立ち、放射線の単位や影響に関する基礎的な説明がなされました。

成果報告は、前半に環境中での放射性物質の動きに関する研究成果について環境研の環境影響研究部、海洋財団から、後半に放射線生物影響研究について環境研の生物影響研究部から研究成果が報告されました。

成果報告会の様子

前半の環境科学技術研究所環境影響研究部の発表では、空気中トリチウムのイネへの移行に関する調査結果が報告がされました。

久松理事(環境影響研究部長)からは冒頭に、再処理工場から排出されるトリチウムがわずかではあるがイネに取り込まれ、お米として人間に取り込まれる可能性があるため、トリチウムのイネへの移行について調べていることが紹介されました。続いてトリチウムの基本的な性質やトリチウムから出る放射線とその被ばくに関して説明があり、トリチウムから出る放射線は非常に弱いベータ線であるため、体外にある時には被ばくについてほとんど考える必要はないが体内に入った時は考慮する必要があること、トリチウムが水として体内に入った場合と有機物として入った場合で被ばく線量が大きく違う事が説明されました。その後、谷研究員から、イネに対してトリチウムの代わりに重水素を取り込ませる実験を行い、イネ中のトリチウム移行モデルを作成した結果が報告されました。イネの場合、例えば出穂時(お米ができ始める時期)の前後といった生育段階のどの時期に重水素を取り込ませるかで収穫時の籾中のトリチウム濃度が異なることが紹介され、空気中トリチウム濃度の変化に対応したイネ体内トリチウム濃度の予測が可能な計算モデルを作成したことについて報告がありました。

海洋科学振興財団の発表では、海洋観測で得られた六ヶ所村沖海況の特徴に関する報告がされました。

島海洋研究部長からは、再処理工場から排出される放射性物質は様々な化学的・物理的形態をとり海洋中を移動、拡散する事になるが、このような放射性物質の動きを予測するためには、六ヶ所村沖合の海況の特徴を正確に把握するための海洋観測が重要であるとの説明がされました。その後、中山研究員から六ヶ所村沖合海況の特徴について報告があり、青森県太平洋沿岸では日本海を北上する対馬暖流が津軽海峡を抜けて太平洋側に流れ込む津軽暖流と北海道沖を南下する親潮により複雑な流れ場が形成されること、その中で六ヶ所沖合では特に津軽暖流の影響を大きく受けていること、そのため六ヶ所沖合のブイの観測結果では1年を通じて東西方向よりも南北方向の流れが優勢であり、特に夏場に南北方向の流れが大きくなることが報告されました。

後半の環境科学技術研究所生物影響研究部の発表では、マウス造血細胞への低線量率放射線の影響と題し、放射線と白血病に関する報告がされました。

小村生物影響研究部長からは、環境研が進める低線量率放射線の生物影響研究の概要について説明の後、白血病に関しては高線量率放射線を被ばくした原爆被爆者などの調査結果から白血病が早期に発生する事が知られていることが説明されました。その後、廣内研究員からは、低・中・高線量率放射線をマウスに照射し、発生した白血病の調査を行った結果について報告がされました。その結果、線量率が高くなるほど発症時期が早くなること、低線量率放射線と高線量率放射線では白血病を引き起こす機構に違いがある可能性があることが報告されました。

最後に日本海洋科学振興財団の折田常務理事から閉会の挨拶がなされ、盛況のうちに閉会となりました。

アンケート結果

1.参加者について

参加者 69名
回答数 58名  回収率 84% (内訳:男性 44名/女性 14名/無記載 0名)
年齢層
年齢層
過去の報告会参加の有無
過去の報告会参加の有無

2.本報告会を何でお知りになりましたか?

グラフ:開催情報入手方法

開催情報入手方法

3.講演内容について

トリチウムのイネへの移行
トリチウムのイネへの移行
六ヶ所村沖合の海況の特徴
六ヶ所村沖合の海況の特徴
放射線の生物影響
放射線の生物影響

4.講演資料について

トリチウムのイネへの移行
トリチウムのイネへの移行
六ヶ所村沖合の海況の特徴
六ヶ所村沖合の海況の特徴
放射線の生物影響
放射線の生物影響

5.ご意見、ご感想

(1)好評な感想・意見(全体)

  • とても勉強になりました。
  • 至近の放射線に関する研究を聴くことができ、よい機会となりました。
  • 特に放射線の生物影響については興味深いデータが多く、知識が深まった。(同1件)
  • 環境影響 海洋研究と比較し、生物影響研究の説明は専門的知識が無くとも聞き入りやすかった。
  • 今回初めて視聴しましたが、様々な研究がされている事におどろきました。長期に渡る研究で、今後実際に再処理施設が稼働したときに環境に与える影響がわかりやすくなるので、これからも経年による研究をお願いします。来年度も出席したいと考えています。
  • 配布資料の内容がパワーポイントによる数値、グラフ、図だけではなく要点が記されていて、報告会に参加していない人にでも理解できるものとなっている。(同1件)
  • 一般の方の理解を深めるため、放射線の単位と影響の解説を冒頭に入れたのは良い。
  • 久松理事のサマリーが最後にあって良かった。
  • 今後も実施下さい。これからも出席します。(同2件)
  • 光合成は大気中のCO2と根からのH2O、そして太陽光のエネルギーにより起ると習ったが大気中H2Oの寄与もあるとのことで、目から鱗の感があった。

(2)好評な感想・意見(個別)

  • マウスを飼育している部屋の温湿度はどれくらいで行っているのか?

(3)指摘を含む意見

  • 研究成果がもたらす意味や目的をもう少し補足して説明しないと、一般の方への正しい理解は進まない様に思う。
  • 内容は理解出来ました。説明する際、もう少しゆっくりはっきり話していただければ、より理解し易いと感じました。
  • 興味深い内容でしたが、一般人の私にはとても難しかった。
  • 研究目的とその結果の利用方法がわからない。住民への活用は?
  • 成果をどの様に施策する反映するか、又はその期待を示して欲しかった。

(4)その他

  • 重水の説明は高校の化学、物理授業を思い出させてくれました。放射線について聞いて安心できたらと参加しておりますが、やはり危険な物だから私達に説明が必要なのでしょうか?

お問い合わせ

(公財)環境科学技術研究所 総務部 企画・広報課

環境科学技術研究所は、六ヶ所村で放射線や放射性物質の環境中における分布や動き、及び低線量率放射線が生物に及ぼす影響に関する調査研究を行っている研究所です。

【電話】0175-71-1240 (受付時間 平日8:30~17:15)
【住所】〒039-3212 青森県上北郡六ヶ所村大字尾駮字家ノ前1番7

平成27年度 成果報告会に戻る